見えない着地点 調整続く民泊新法の「現在地」

民泊新法は、今年の夏に官邸側が関係省庁に今年秋の臨時国会へ前倒しするよう指示し、提出が目指されていたが、年間営業日数を巡って業界間での意見が分かれ、調整が難航したために提出は見送られ、2017年の通常国会への提出を目指している。

11月に入り、日本旅館協会、京都市、自民党賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)が民泊新法への要望や意見をまとめ、政府サイドへの働きかけを強めている。

各団体、自治体の動き

日本旅館協会は11月10日、全国の協会理事が自民・公明党の事務所を訪れ、民泊に関する要望書を提出。

要望として挙げられた内容は、
・年間宿泊日数上限が外部から確認できる制度を設計する
・年間宿泊日数を「予約可能日」で管理する
・予約可能日は分散せず、一定の連続期間で設定する
・民泊施設管理者が行政へ届け出・登録する際に予約可能日を記載する

仕組みにより年間宿泊日数上限を徹底させ、民泊拡大の抑止を狙う

京都市の門川大作市長は11月14日、民泊新法についての要望書を厚生労働省大臣へ提出。

要望として挙げられた内容は、
・地域ごとに独自の規制設置を可能とすること
・違法民泊に対して自治体が立ち入り調査をする権利を付与すること
・違法民泊に対して営業停止命令を下せるようにすること
・市内では集合住宅一室の民泊転用を禁止すること
・違法物件を仲介サイトに掲載できないようにすること

違法民泊の増加による周辺住民とのトラブルが相次ぎ、民泊の規制強化を求める

自民党議員342名が所属する自民党賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)は11月16日、民泊に係る決議案をまとめた。

具体的な内容は、
・少なくとも180日の営業が可能な制度として、法律に明記すること
・民泊を管理する事業者は宅建業、旅館業、旅行業、管理業の登録者とする
・共同住宅や空き家を活用し簡易宿所とする場合は、既存とは別類型で法制化し、手続等を簡素化する
・民泊転用促進助成制度の新設を求める

民泊の拡大に向けて、様々な障壁の撤廃を求める

取り残される住民の声

上記から、業界団体は「事業」を主眼に置き、自治体はいかに「住民」の安全を守ることを重視していると見られる。民泊を積極的に取り入れようとする東京都大田区や大阪府大阪市では、民泊の適正な運営についてのルールが明示され、民泊規制を強化する京都市においても、規制という方向ではあるがルールを明確にしようと動いている。今後、民泊解禁に向けて規制緩和を予定している地域は、千葉市や北九州市など、ごく一部の地域にとどまっている。

民泊に対しては、周辺住民からは下記のような不安の声が相次ぎ、「民泊」への印象は決して良いものではない。

・同マンションに住むものとしてはかなり高い家賃を払ってるにも関わらず、夜の騒音、不特定多数の第三者や外国人の出入りに非常に不安を感じております。場所が場所なので犯罪の温床になってるのではと感じてしまいます。
・早朝や夜中の廊下で大人数のしゃべり声、入口付近へのゴミの不法投棄、夜中の部屋の中の騒音、管理会社に連絡するも対応なし。
民泊ポリスより抜粋)

民泊新法での議論の多くが事業者サイドで形成されたものであり、「住民との調和」は事業機会としては考えられていないため、ほとんど論点に含まれていない。民泊新法がどのような内容であれ、民泊が無くなるということはなく、いかに住民と調和させるかについて自治体は今以上に検討をする必要があるのではないだろうか。